神道夢想流杖術について
神道夢想流杖術は、長さ四尺二寸一分(約128cm)、直径八分(約2.4cm)の樫の木の直杖を用いる武術(捕縛術)です。稽古は精妙に組み合わされた杖と太刀の攻防技法を「形」として反復修錬する方法を主としています。

流祖は戦国時代から江戸時代にかけての慶長年間(1596年〜1614年)に活躍した夢想権之助勝吉と伝えられています。権之助は、先に天真正伝香取神道流の免許を授かり、更に鹿島神流の奥義を究め「一の太刀」の極意を授かった後、一度宮本武蔵と勝負をして敗れました。以後、武蔵に勝つために諸国を遍歴して修行を重ね、ついに筑前の国(福岡県)太宰府天満宮神域に連なる霊峰宝満山に至り、「丸木をもって水月を知れ」との御神託を授けられました。権之助は、丸い木と水月の御神託を体現するため、種々創意工夫し、三尺二寸の太刀より一尺長くして四尺二寸一分、直径八分の樫の丸木を作り、これを武器とし、槍、薙刀、太刀の三つの武術を総合した杖術を編み出し、最後には宮本武蔵の十字留を破ったといいます。

権之助については資料も乏しく、武蔵との勝負についても疑問の余地はありますが、神道夢想流杖術が黒田藩(福岡)において、下級武士の男業(捕縛を目的とする武術)としての御留武術として伝えられたことは事実です。昭和に至る過程で、黒田藩士第二十四代の統、白石範次郎重明の高弟清水隆次克泰師範が上京し普及発展に努め、一方福岡では同じく高弟乙藤市蔵勝法師範が第二十六代の統として御流の継承と発展に精力的に活躍され、現代武道として「杖道」の礎を築かれました。 現在、全日本剣道連盟杖道部の他、免許皆伝を受けた先生方が、それぞれ団体を立ち上げられ、術を伝えておられます。

古伝の書に「突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀、杖はかくにも外れざりけり」と教えられていますが、突き、払い、打ちの攻防技法が組み合わされた形は、その段階毎のカリキュラム構成も優れており、稽古を進めるにしたがって、間合いや理合いの異なる身体動作を身に着け、自由自在に杖を扱うようになれるよう工夫されているのではないかと思われます。

日本杖術協会 全国練成会
神道夢想流杖術の形
【表】 太刀落 鍔割 着杖 引提 左貫 右貫 霞 物見 笠之下 一禮 寝屋之内 細道
【中段】 一刀 押詰 乱留 後杖(前・後) 待車 間込 切縣 真進 雷打 横切留 払留 清眼
【乱合】 大太刀 小太刀
【影】 太刀落 鍔割 着杖 引提 左貫 右貫 霞 物見 笠之下 一禮(前・後) 寝屋之内(前・後) 細道
【五本の乱】 太刀落の乱 左貫の乱 間込の乱 霞の乱 斜面の乱
【五月雨】 一文字 十文字 小太刀落 微塵(表、裏) 眼潰
【奥】 先勝 引捨 小手搦 十手 打分 水月 左右留 小手留 突出 打附 見替 阿吽
【極意】 闇打 夢枕 村雲 稲妻 導母

【表】 太刀落

【中段】 横切留